Activity

Design Tourism

2024.02.09

デザインツーリズム@広島 前編

デザイン・ツーリズム へ、

秀逸なデザインと、その地域を訪ねる旅
デザインを五感で捉える旅
デザインの創り手、使い手、担い手と出会う旅
デザインの価値や意味を知る旅
デザインの刺激を受け、内省し、語らう旅
デザインの英知を伝える旅
それらを
デザイン・ツーリズムと名づけ出かけました

 

今回の旅の舞台は広島。★前編は尾道の旅ルポ。★中編は広島市内の旅ルポ。★後編は空間オブザイヤー受賞作品 広島平和記念資料館の設計者インタビューの3回に分けて配信いたします。

前編 尾道/

神勝寺 禅と庭のミュージアム→ベラビスタ→リボンチャペル→出雲屋敷→島居邸洋館→湊の宿→U2
地域創生においてデザインが果たす役割が益々重要になってきています。一泊二日の視察旅行の1日目は瀬戸内地域が持つ資源や記憶を大切にしながらデザインの力で昇華させ新たな魅力と価値を生みだし続けている地場の企業=せとうちクルーズの活動や施設のデザインに私たちは注目して旅体験してきました。参加クリエイターたちが感じた旅を、ご覧あれ!

 

神勝寺 禅と庭のミュージアム

「神勝寺 松堂」 建築設計:藤森照信

左:銅板葺き屋根の折りは、建築家 藤森照信さんとボランティアが手作業で作ったそうだ。
そのいい加減な味わいは自然と調和し優しい。・・・そして気づかされた。人間は自然の一部だということに。(津山)
右:歩廊。松堂の屋根の印象からつながる壁の印象。ここでは御寺のある和の空間だということを一瞬忘れてしまった。(谷口)

 

手曲げ銅板による屋根、無機物なのに圧倒的に有機的な仕上げ(村上)

 

控えめではない作家性、ディテール名がきっと「藤森収め」(村上)

 

「手書き」と「有機的なモノ」ある種、cad図面より正確な現場と整合性ある手書き図面
(村上)

 

学生の頃、藤森氏といえば建築史家であり、カメラと地図を手にフィールドワークを行う建築探偵、そんな印象だった。

当時コールハースやMVRDVなどデジタルでアクロバットで大胆な建築が注目される中、藤森氏の手掛けた建築、「タンポポハウス」「ニラハウス」といった、その真逆を行くような有機的な建築に、僕個人は正直あまり心が揺さぶられなかったことを覚えている。

今思えば、誌面情報だけで頭でっかちだった僕に、その建築の意味を理解出来なかっただけだった。(村上)

 

「五観堂」

左:雲水の食事体験ができる茶房へ。雲水にとって一番のご馳走が味わえる場所。右:まずは薬味と煮物。食事を始める前に箸の大きさ、太さに驚き。(谷口)

 

雲水の一番のご馳走に驚き。うどんがご馳走?いえ、そこではなく、うどんの太さ。これがうどん呼べるのか。いや、雲水の一番の楽しみ、心弾ませいただきました。(谷口)

 

左:紅葉が綺麗でした。(行方)右:秋晴れの下、散歩道を歩き神勝寺に着いた時から楽しみにしていた作品へ。秘密基地へと急ぐ子供の気持ちが蘇る。(谷口)

 

禅寺での食事の作法を教わって、ごっついお箸でごんぶとなお饂飩をいただきました。作法に則って食べた後は食器も綺麗に清められています。
食べ方=生き方というのが禅の教え
普段いかに雑に食(生き方)に向き合ってきたか反省…(行方)

 

「神勝寺 洸庭」 建築設計:名和晃平

伝統的な技法こけら葺きで仕上げられた構造体は迫力があり圧巻された。曲線さ木のぬくもりがどっしりとした中に優しさや柔らかさを演出しており、まさに大海原へ航海する船そのもの。(谷口)

 

UFOの中に吸い込まれていく。本当にこの後、私たちはこの船でどこか知らない宇宙へ連れて行かれたのです。(行方)

左:洸庭の側面。曲線美が際立ち美しい。どこを切り取っても美しいそんな印象を受けた作品。(谷口)右:サワラのピクセル、心地よいムラを生む同一材の集積。(村上)

 

窓のない建築。光を遮断した内部空間の闇に浮かび上がる光。ただ、目を凝らしてもその全体像は把握できない。間違いなく建築なのに、体験しきれない空間。その分、水の蠢く僅かな音、ないかもしれない匂いを感じる。体験したのは「感覚」だったのか、、、(村上)

 

アーティスト名和晃平さんと照明デザイナー岡安泉さんが作り出した不思議な宇宙
言葉で伝えるのは難しく…ぜひご自身の目で確かめてみて下さい!(行方)

 

御寺のある空間と聞くと、歴史ある堅苦しい空間。そんな印象を抱いていた。だが、そんな印象を見事に覆したのがこの「新勝寺」。新勝寺で出合った作品は斬新で感銘を受けるものだった。過去と現代を折り合わせた空間。新しい形で私たちを楽しませてくれる、まさに御寺のテーマパーク。良き作品との出合いに感謝した瞬間だった。(谷口)

 

 

ベラビスタ スパ&リゾート

「レストラン エレテギア」

左:ベラビスタはイタリア語で「美しい眺め」(笠原)、右:光への、誘い。(戸矢崎)

 

左:海へ続く道(戸矢崎) 右:インフィニティープールが瀬戸内の絶景と一つになる 多島美…(笠原)

 

左:虚と実、上下 右:虚と実、左右(戸矢崎)

 

過去から望む未來…(戸矢崎)

 

レストラン エレテギア。まるで屋根が浮いているようだ(笠原)

 

スチールと木の混構造(笠原)

 

「レストラン エレテギア」
この作品を初めて写真で見た時、なんて美しい建築なのだろうと感動したことを覚えている。ガラスの壁と細い柱は存在を消し、繊細なサイズの架構が組まれた屋根はまるで浮いているように見えた。一度実物を見てみたいと思っていた。そして実際のエレテギアは想像通り美しかった。一つ想像と違っていたのは、柱がスチール製だったこと。極限まで細い柱が2本繋がれることで強度を出している。やはり百聞は一見にしかず、である。(笠原)

 

「RIBBON CHAPEL」建築設計 :中村浩志

二重らせんを構造とした世界に類のない建築。ふたつの螺旋階段が連結され、互いに支え合い自立する(笠原)

 

周りの自然と一体化したチャペル内部(笠原)

 

チャペルの内在するテーマを絶妙に昇華したデザイン。内と外の二重螺旋の階段が織りなす出会いのアクティビティ。複雑で美しい構造設計の傑作。頂点で広がる瀬戸内海の絶景に心を動かされた。(津山)

LOG

改修設計:スタジオムンバイ

尾道に、失われゆく日本の原風景。人の記憶と、町の面影を大切にしながら、新たな価値を生みだした場所があった(津山)

 

LOGとは、Lantern Onomichi Gardenの略。空家で暗くなってしまった尾道を照らす!切なる想いをこの三文字に込められた、せとうちリゾートの宿・・・そして、それを超えた場。
(津山)

 

左:味のあるバーカウンター、色や質感がどことなく船に見える。造船の町だからだろうか。 右:土間のようなデザインでありながら、縁側のような解放感があり、低い視線から落ち着いて景色やインテリアデザインを楽しむことができる。(奥)

 

開放的な空間と大きな開口を確保され、外からは立ち寄りやすく、内からは移ろいゆく自然や町を眺められ、人々の交流しやすい場を提供している(奥)

 

小津安二郎監督のローアングルを、畳ではなく、ベンチで再現している。その眼差しから見える  やさしい景色は変わらない。(津山)

 

本が少ないライブラリー。読んでいたのは、内なる声だった。(津山)

 

あえて景色を見せない窓で、知ったブルーモーメントの美しさ。窓を開ければ、、、、見知らぬ光景。(津山)

 

入隅も出隅も「あたたかみ」に仕上げる手仕事(三宅)

 

左:すべてが和紙。人が丁寧に月日を重ねた、呼吸する作品のような部屋 右:空気も風景も混ざり込み、ここにいた人の会話が聞こえてきそうな空間(三宅)

 

建築と共に生きるギャラリー建物の構成要素が整理され、伝えられている。(三宅)

実際に館内で使用している製品や素材、塗料、デザイン資料集が展示されている。旅人をより深い世界観に誘う巧妙な演出である。(奥)

 

左:色サンプルは、メイキング・ストーリーを伝える仕上げとして、残りつづける。
右:空間を柔らかくする色の塗り方へのこだわり(津山)

 

以前中庭にあり取り壊させた建物は様々な材料として生まれ変わり受け継がれています。瓦は、庭や入口の瓦畳に利用されています。(奥)

 

石は記憶をとどめる記録装置であり、光を通すことで悠久の時を感じることができる希少な素材である。(奥)

 

夜になると館内はランタンのような柔らかな光に包まれ、町を優しく照らしている。(奥)

 

左:夜明け前、徐々に東雲色に変化する館内。絶妙な配色によって、その時々の雰囲気をはっきりと感じ取ることができる。 右:時間や季節の移ろいによって大きく変化してゆく表情豊かな町並み。LOGは、季節は人々の営みを記録するログなのかもしれない。(奥)

 

左:素のままの美でやさしい朝の綺麗な目覚め 右:一服の、白湯(津山)

 

ゆるやかな、時の流れを、味わった。(津山)

 

尾道の歴史に溶け込む、何色ともいえない見事なカラーリング。建築は人が入ることで役目を変えながら存続することを体現している。表面のテクスチャには仕上げ材という印象はなく、既知感のない空間に包まれる心地よさ、そこから生まれるであろう会話や仕草は、普遍的ながら特別な時間を共有できるように感じる。初めて出会う人々が知らぬ間に家族のように集い、過去も未来も混在する場所として、絶妙な余白が構築され、今も育てられている。(三宅)

 

 

湊のやど

「尾道 出雲屋敷」改修設計:中村昌生

外観 樹木に囲まれ海と街を見下ろし凛と立つ姿 (木村/photo – Tetsuya Ito)

 

玄関 まるで料亭のような心落着く感と緊張感と混合(木村/photo – Tetsuya Ito)

 

月見台 雲居の月を眺め、しばし過ごしてみたかった(木村/photo – Tetsuya Ito)

 

寝室 優しく障子で仕切られ、居心地の良いベッド(木村/photo – Tetsuya Ito)

 

2階居間 数寄屋建築の美しさ 静寂を壊さぬよう思わず小声になる、素晴らしい日の出の眺めに感動(木村/photo – Tetsuya Ito)

いつからここに佇んでいるのだろうか
尾道のやさしくはない坂の上にある屋敷
昔、松江藩から御用塩や綿などの交易のため藩の役人の常駐所だったそうな
趣のある木のぬくもり 静けさが似合う空間
旅の疲れを癒してくれるとっておきの時間(木村)

 

「島居邸洋館」改修設計:桐谷昌寛

千光寺へと続く石段の途中に佇む瀟洒な一棟貸しの洋館には、昭和初期から親しまれた面影が残る。(津山/photo – Tetsuya Ito)

 

室内には開放的な空間が広がり林立する柱がアクセントとなる、和と洋が溶け合う暮らし。 (津山/photo – Tetsuya Ito)

 

レトロモダンな円窓から差し込む朝は、初めてなのに、何故か懐かしい。
(津山/photo – Tetsuya Ito)

 

バルコニーからせとうちの海を眺め味わう一杯の至福。(津山)

 

どこに座ろう? どこで寝転がろう?くつろぐ愉しみが随所に凝らされている。
もう少し長く、暮らしたい。次は、(津山/photo – Tetsuya Ito)

 

ONOMICHI U2

改修設計:谷尻 誠

 

もと海運倉庫だったレトロな建物(笠原)

尾道水道を目の前にした海辺の倉庫群。もとは「県営上屋2号倉庫」という海運倉庫だった建物をホテル、レストラン、ショップの複合施設にリノベーションしている。しまなみ海道を拠点としたサイクリストを取り込み、地域活性化するための試みで今後も7号倉庫まで続けていくという。(笠原)

 

日暮れと共に、宿から坂道を下り、街を歩き、海を見ながらU2へ向かう。訪問者にとっては、そこからU2が発信する存在価値を知るヒント探しが始まっていたかもしれません。

日が落ち始めた頃、U2へ到着。外観は、明るく煌々とライティングされている事もなく、周囲の空気感の「色」にしっかりと染まっていました。街の一日の時間軸と同じ様に、明るくなれば活気が生まれ、暗くなれば時間を忘れさせる、そんな建築姿を眺めながら、とても良い心地よさを感じました。(高尾)

 

 

レトロな空間にモダンなショップが並ぶ(笠原)

 

名和晃平氏のアート / 対面の二層空間は自転車を持ち込めるHOTEL CYCLE(笠原)

 

尾道の海の幸で晩餐スタート(笠原)

 

内部は、力強い構造体を緩和するかの様に、構成された平面や断面計画。そして、その既存建築と素材、サインデザインなどの調和がとても良く、我々が日頃出しきれていない、また出す方法を知らない(本来持つ建築の力)を、さまざまなツールが一体となり、その魅力を十分に発揮していると、私なりにとらえさせてもらいました。

また、U2をはじめ、そこ(尾道)で働く人の情熱もとても素晴らしく、ひとりひとりが、街を愛していると言う事が前提で、そこに存在する建築(インテリア)は、共に成長するのだな、と改めて感じさせてもらう事の出来た、2023のデザインツーリズムでした。(高尾)

 

前編レポートメンバー

※50音順

その他の旅人達

上野 鐵也(ジェットデザイン)、大西 亮(乃村工藝社)、大森 あき子(大森デザイン事務所)、春日 康志(乃村工藝社)、澤山 乃莉子(BABID)、田中 利岳(丹青社)、成富 法仁(船場)、藤坂 浩匡(藤坂建築デザイン工房)、渡部 嵩洋(スペース)、渡部 ひとみ(アイズ・ユニバーサル)

 

中編 広島の旅ルポにつづくお楽しみに!