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Design Tourism

2022.10.21

初!デザイン・ツーリズム視察ツアー in 徳島 開催!~前編~

この度、日本空間デザイン賞では初の試みとして、良きデザインや空間を感じ考えることを目的とした「デザイン・ツーリズム視察ツアー」を開催しました。

ツアー参加メンバーは日本空間デザイン賞を主催する日本商環境デザイン協会(JCD)と日本空間デザイン協会(DSA)の協会所属の有志11名。ツアーコースの監修役はDSA所属・津山竜治氏(乃村工藝社)。昨年の日本空間デザイン賞2021でグランプリKUKAN OF THE YEARを受賞した「未来コンビニ」や、今年の日本空間デザイン賞2022で金賞を受賞した「上勝ゼロ・ウェイストセンター」など徳島の地域創生デザイン拠点を中心に、1泊2日で見どころ満載の視察周遊ツアーを行いました。

初!デザイン・ツーリズム視察ツアー in 徳島 開催!~前編~2021年日本空間デザイン賞大賞受賞 作品名「未来コンビニ
撮影:Nacasa & Partners 太田準也

2022年日本空間デザイン賞金賞受賞 作品名「上勝ゼロ・ウェイストセンター」

2022年日本空間デザイン賞金賞受賞 作品名「上勝ゼロ・ウェイストセンター」
2022年日本空間デザイン賞金賞受賞 作品名「上勝ゼロ・ウェイストセンター」
2022年日本空間デザイン賞金賞受賞 作品名「上勝ゼロ・ウェイストセンター」

デザイン・ツーリズム視察ツアー 概要

ツアー行程:
1日目: 2022年9月10日(土)

  1. KITO DESIGN PROJECT 1:  CAMP PARK KITO視察 & BBQランチ
    CAMP PARK KITO https://cpkito.com
  2. KITO DESIGN PROJECT 2:  未来コンビニ&新設カフェテラス 視察&コクヨ佐藤航氏インタビュー 未来コンビニ https://mirai-cvs.jp
  3. KITO DESIGN PROJECT 3
    ユズ加工施設 黄金の村視察
    黄金の村 https://ogonnomura.jp
  4. KITO DESIGN PROJECT 4: 建築中のキックボクシング道場視察-

宿泊先:
Next Chapter ゲストハウス・木頭 https://www.nextchapterkito.com
木頭ゲストハウスはなれ https://hanare-kito.jp


2日目: 2022年9月11日(日)

  1. 株式会社メディアドゥ 代表取締役社長CEO 藤田恭嗣氏と面談
  2. 大釜の滝など雄大な自然を散策
  3. RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store視察 & カフェランチ https://kamikatz.jp
  4. 上勝町ゼロ・ウエイストセンター視察  https://why-kamikatsu.jp

ツアー参加者リスト(順不同, 敬称略)

津山竜治(DSA)、上野鐡也(DSA)、大西亮(JCD, DSA)、笠原英里子(JCD)、大原信子(JCD)、木之内憲子(JCD, DSA)、大森あき子(DSA)、須賀成人(DSA)、日下大祐(JCD)、寒川洋次(JCD)、村上敦(JCD)
取材協力:  KITO DESIGN HOLDINGS

Chapter_01:未来コンビニ

「未来コンビニは『未来の主役である子供たちの場所』をテーマに、子供たちがここで様々な人やモノ・コトに出会い、沢山の刺激を受けられる場として建てられました。 漫画家の手塚治虫先生が語った『子供は未来から来た未来人』という言葉にちなみ、『未来コンビニ』と命名されました。」

佐藤航 氏(KOKUYO Chief Designer)

佐藤航 氏(KOKUYO Chief Designer) 撮影:Nacasa & Partners 太田準也

冒頭から丁寧な口調で概要を話してくれたコクヨ佐藤氏。今回は現場リポートであるため、特に現場でしか伝わらないデザインのポイントについて以下簡潔に紹介します。

お話をお伺いしたのは、建築・インテリア・ランドスケープデザインを担当された 佐藤航 氏(KOKUYO Chief Designer)です。

 

 

 

 

柚子の木をモチーフにしたトラス構造」

空間デザインを決定づけた要素として特筆すべき1つは、村の中に映える柚子色の立体トラスである。ディティールを見て早速感嘆するインタビュアーたち・・・

応募写真からは読み取れませんでしたが、このトラス構造は表現すべき柚子の木のイメージに近づくよう1本1本丁寧に木頭ゆずのイエローで塗り分けられていました。塗装には地元の方々もお手伝いされたとのこと。空調ダクトの納め方もかなり攻めてますね!

初!デザイン・ツーリズム視察ツアー in 徳島 開催!~前編~
撮影:Nacasa & Partners 太田準也


塗分けのディティール


空調ダクト納め方、攻めてます・・・

「細部まで気を配るサイズ感」

通常、コンビニの通路幅は900mm程度です。「レイアウト上の効率を考えるなら、もう一列確保できるところでしたが、ココでは陳列棚の数よりもより広く通路幅を確保することを優先させた」-佐藤氏。通路幅1150mmとし、さらに断面形状を台形とすることで体感的にゆったりとした印象を持たせる工夫を行ったようです。台形の陳列棚には傾斜をつけて子供や高齢者の視点に合わせ商品を見やすくし、利便性を優先させながらも、 H1350mmと低い什器高もあいまって空間を広々と豊かに演出していました。それは結果的に構造スパンのピッチとも一致し、外観からの見た時の一体感に繋がりスマートな印象となっていました。


撮影:Nacasa & Partners 太田準也

「受賞パネル掲出”11冠達成!!」

店内に掲出されているデザインアワードの受賞パネル。なんと11冠・・・!木頭で見学、利用させていただいた施設で共通して言えるのは、そこで働く方のモチベーションが高く、またホスピタリティに溢れていることでした。これは木頭が注目されていることに、働く皆さんそれぞれが誇りをもって持っているからだと思います。また、それは利用者するお客様にとっても同様です。日本空間デザイン賞を始め、世界中の多くのデザインアワード受賞は、その誇りに大きく寄与していると思います。


コクヨデザインチームの皆さん:左から須賀 真紀子さん、佐藤 航さん、黒尾 智也さん

特にこだわった屋根の薄さ」
「”地元の皆さんや来訪者の皆さんが集まる空間を一枚の大きな板で包み込む”ための大事な建築要素なので、共同設計のGEN設計さんや照明設計のHKL&D 加藤さんと共に屋根のデザインにはかなり拘りました。」-佐藤氏

屋根の厚さはなんと30センチ・・・。その厚さ(薄さといったほうが正しい?)の中に外断熱シートとグラスウールを納め、通気を確保し、照明器具も内蔵しています。また、壁と天井の取合いには隙間を設け、結露対策もしているそうです。

「時刻表示だけではないデジタル時計演出」
ファサードのアイコンの一つでもあるデジタル時計。これはクリエイティブディレクションを手がけた鵜野澤啓祐氏のアイデア。それは時刻表示だけでない演出プログラムもあるようです。雪の日は白い明滅が上から下へ流れるように・・・またクリスマスはツリーカラーに、という季節に応じて表現が変わる演出です。ここ木頭での時を刻む、というテーマのもと1年という流れる時間のデザインにも気が配られていました。

Chapter_ 02:未来コンビニのその後「新設されたカフェテラス」

時空を超えて組み合わさるデザイン」

未来コンビニの横には屋外テラスが新しくオープンしていました。
昼はランチに、夜は星空の下でビールを飲めるなど多様な場として活用されます。

元は小学校が建てられていたという石垣の擁壁をそのままに残し、新しく補強したコンクリートの壁が年月を経た擁壁に被さって共存しています。既存の地形をそのまま残し、大階段など足りない部分をコンクリートで補い、古いものと新しいものが織り交ざったテラスに生まれ変わっています。


撮影:Nacasa & Partners 太田準也

「ワーケーションにも使用できるカウンター」

最上階にあるカウンターには屋外電源が完備されていました。連なる山々の風景を楽しみながらの仕事も可能と、ワーケーションにも抜かりなく対応。さすがコクヨさんです。ここからも屋根の薄さは確認できますね。
撮影:Nacasa & Partners 太田準也

「既存の植生も取り込むランドスケープデザイン」

植栽計画にも工夫がありました。新規で植え込む植栽と自生している植物を混ぜているのです。すべて新規でデザインするのではなく、自然の木々も活かしたランドスケープデザインです。

夜間は擁壁に埋め込まれたライン状の間接照明でライトアップされます。

自然に調和しながらも新しい素材を活用し、計算しつくされた高さ設計のもと生まれ変わった大階段テラスは、時を超え、この地域の未来へ向けて美しい存在感を放っていました。


自生する植生を活かした植栽計画


撮影:Nacasa & Partners 太田準也


新設されたカフェテラスの夜景

Chapter_03 KITO DESIGN HOLDINGS株式会社インタビュー

「時間を超えて組み合わさるデザイン」

未来コンビニの現地インタビューの翌日、 KITO DESIGN HOLDINGS株式会社代表取締役社長藤田さんと座談会を行いました。特に印象的だったのは、新設されたカフェテラスのコンセプトです。

「未来コンビニが一番美しいのは、営業時間外の夜と朝4時。これまでは建築の美しさを見せる場所がなかったので、建築作品としても楽しんでみてもらえるように新しくテラスをつくった。だからこそ昼間の賑わいだけでなく、お店を閉めた後でも、ずっと灯りをつけたままでテーブルと椅子があって、パラソルも開いたまま。町の人たちがこの場所を自由に使えるようにしたいのです。休むところが足りないから作る、という機能改善だけが目的ではありません。不便を便利にするだけではただのツールになってしまう。それよりも「なぜこういったものがここにあるんだろう?」と興味を持っていただくことが大事なんです」と熱い想いを語ってくださいました。木頭という山の中で、都会では形にできないデザインを通した自然、さらに社会課題解決との融合を見た気がします。藤田さんの情熱がデザインを通して「未来コンビニ」という形になり地域に根ざし、さらに世界にまで認められているという事実からは、大袈裟かもしれませんが本当に時空が捩れるほどの熱量を感じました。

株式会社メディアドゥ(東証一部上場、2022年より東証プライム市場)
代表取締役社長 CEO
藤田恭嗣さん

プロフィール

1973年、那賀町木頭(旧木頭村)生まれ。国内の電子書籍取次No.1のシェアを誇るメディアドゥを率いる。近年は生まれ育った木頭での地方創生に力を入れ、木頭ゆずの栽培・加工販売を行う「黄金の村」や最新設備を取り入れたキャンプ場「CAMP PARK KITO」などを設立。2020年1月に地元企業と共に「起業家支援団体徳島イノベーションベース(TIB)※」を立ち上げ、代表理事に就任。地方の起業家をバックアップする環境を整えている。  ※徳島新聞社、四国放送、阿波銀行、徳島大正銀行、メディアドゥの5社が共同で設立した一般社団法人。


木頭を舞台に地方寒村の危機的未来を塗り変える実話をもとにした
感動の物語書籍『奇跡の村』にサインしていただきました!

以上で「初!デザイン・ツーリズム視察ツアーin 徳島 開催!~前編~」を終えますが、次回は後編として、「上勝ゼロ・ウェイストセンター」ほかをお届けできればと思っております。

乞うご期待!!