Activity

Design Tourism

2023.02.07

初!デザイン・ツーリズム視察ツアー in 徳島 開催!~後編~

この度、日本空間デザイン賞では初の試みとして、良きデザインや空間を感じ考えることを目的とした「デザイン・ツーリズム視察ツアー」を開催しました。

ツアー参加メンバーは前日の木頭から同じメンバーの11名。二日目は前日の未来コンビニと藤田氏インタビューの興奮を残しつつ次の目的地「上勝ゼロ・ウェイストセンター 」へ向かいます。

藤田氏とお世話になった木頭の方々とパチリ

Chapter_01:うつろい

すぐそこにある「うつろい」。秋にはどのように変化するのか・・・

「上勝ゼロ・ウェイストセンター 」への移動は車移動。車内ではデザイン談義に盛り上がりつつも、道中の豊かな自然にも圧倒されます。これから秋に向かってさまざまに変化していくであろう四国山間部のうつろいが、改めて時間という目に見えない概念を感じさせてくれます。

地域資源とデザインの関係性を探ることは今回のサブテーマでもあり、産業、資材、人、暮らしなど、その地域でしか成立しないローカルデザインこそが、実はグローバルな潮流となっていることを深く感じることができました。

「大轟の滝(おおとどろのたき)」

とくしま88景に選定される20mほどの3段滝で、春には新緑、秋には紅葉が楽しめ、毎年11月には滝のライトアップが行われるそうです。

水量が年々減少し現在は滝底が見えるほど干上がってましたが、以前は滝底が見えないくらいの水量を湛えていたとのことです。

左から)移動中も盛り上がるメンバー、想いに耽るメンバー、割と秘境…

「大釜の滝(おおかまのたき)」

日本の滝百選、とくしま88景、とくしま水紀行50選に選定される、周囲を絶壁に囲まれた落差20mの滝滝。現在も豊富な水量を誇り、滝壺は水深15mと深くここには大蛇が棲むという伝説があります。滝壺へは階段を降りた川底から近づくことができ、メンバーも降りましたが、かなりの大冒険でした!

滝壺はかなり神秘的な印象

左から)道が狭まく両側は絶壁、滝壺まで降りるメンバー!

「地のもの」

山間部から集落を抜け、途中のJA東とくしま「よってネ市」に寄りました。みかんの栽培が盛んな町ということで「みかん推し」ですが、柑橘系以外にも地の椎茸や加工品もラインアップ。また、四国88カ所巡りの番札がすぐ近くにあることから、お遍路さんの休憩所としても有名とのことです。

JAは地域に直接触れることができるアンテナショップでもある

公衆トイレの張り紙

JAでは「国消国産」というキャンペーンを行なっていますが、今回訪れた各所で地域素材などの資源活用を環境配慮的視野でPRされている印象を受けました。

公衆トイレの何気ないメモからも地域と環境へのメッセージが伺えます。

 

 

Chapter_02:ごみを出さない社会へ

上勝町ゼロ・ウェイスト宣言

上勝町は四国でもっとも人口の少ない町(1457人2022年1月現在)として知られる一方、2003年に自治体として日本で初めて『ゼロ・ウェイスト宣言』を行ったことで世界から注目を集めています。ゼロ・ウェイスト=ごみを出さない社会を目指すことで、ごみをゼロにすることが上勝町の目指す未来の姿です。上勝町はごみを燃やさず、収集を行わず、住民各自が町営の「ごみステーション」に自ら持ち寄って13種45種類に分別することで再資源化を進めています。生ごみは各家庭でコンポストを利用して堆肥化するなど、そのリサイクル率は2020年に80%を超えました。

今回のデザインツーリズム2日目は、上勝町の『ゼロ・ウェイスト宣言』にデザインがどのようなアプローチで参画し、どのように関わり、そして具現化したのかを視察を通じて体験することが目的です。

上勝町ホームページより引用(https://zwtk.jp

RISE WIN Brewing Co. BBQ & General Store

「上勝ゼロ・ウェイストセンター 」と同じ中村拓志&NAP建築設計事務所が設計を手がけた施設で、上勝町の『ゼロ・ウェイスト』の活動に共感し、この町の未来とともにあるブルワリーを2015年5月に開業されました。町内で解体された民家で使われていた建具を再利用した建物は、持続可能な社会のあり方を建築で表現したものです。

醸造所、レストラン、ショップ、宿泊施設を備えたクラフトブルワリー

左から)外構も気が利いています、特徴的なファサード

「居心地のデザイン」

民家から廃棄物として収集した建具や調度品は、店舗機能を補完するだけでなく「居心地の良い空間」として情緒的な価値も担っています。一見、無作為に揃えたような廃材も意匠的リズムを緻密に設計しているのではないかと思います。

ファサード側全面二重ガラスから差し込む光が空間を広々と感じさせるのはもちろん、サッシ枠が織りなす絶妙な陰影は借景を切り取るのではなく曖昧な境界を設けることで居心地の良さを醸成しているのだと感じました。

廃材の調度品が居心地の良い空間を演出

左から)明るく広がりのある空間、醸造所の建具

「コンセプトを踏襲する」

設計コンセプトは空間デザインにとどまらず、メニューやグッズ、スタッフのサービスまでコンセプトが行き届いていることがわかります。

ランチやBBQができる裏庭は非常に明るく開放的で、利用する「楽しさ」も充実しています。廃材を用いた空間であることのデメリットやネガティブなイメージは全く感じませんでした。

左から)明るいBBQスペース、ランチタイムでご機嫌なメンバー!

左から)スタッフさん達イキイキしすぎ!、コンセプトを踏襲したクラフトビール

左から)ランチに満足のメンバー、グッズやPOPも一貫したコンセプト

上勝町ゼロ・ウェイストセンター

ランチを済ませ、いよいよ二日目の目的地に到着。

2020 年 5月、旧ゴミステーションをリニューアルした上勝町ゼロ・ウェイストセンターがオープンしました。ゼロ・ウェイストセンターは上勝町が推進する“ゼロ・ウェイスト”の新たな拠点であり、町民にとっての利便性はもちろん、町外から訪れた人たちがゼロ・ウェイストの理念を学び、世界に広げていける施設を目指しているととのこと。

リサイクル率は 80%を超える上勝町唯一のごみ収集場として、また地域の人々が集うコミュニティとしてどのようにデザインが作用しているのかを実際の空間で体験しました。

©TRANSIT GENERAL OFFICE
上空から見ると建築物が「?」のレイアウトになっている

中村氏の設計コンセプト

レイアウトを見ると「?」マークは広告的な位置付けよりも配置構成上の意味が強いことがわかる

「ディテールの完成度に圧巻される」

言葉は悪いかもしれませんが、「廃棄物でつくられた施設」は、はるか想像を超えてデザインへと昇華されていました。・・・

設計に携わるものとしてすぐに気付かされる圧倒的な量の事前準備(700枚もの廃棄建具の採寸や行政とのやりとり)や設計作業(不定形の廃材を利用することの辻褄合わせ、不揃いの丸太を合理的な構造システムに昇華させること、)があったはずですが、出来上がったこの施設は無理なく自然にそこに存在し、それでいて機能的であり、心地の良いものでした。町中から集められた廃材=資源は程よく角の取れたマテリアルになっており、空間に優しさを与えていると感じます。

左から)廃材を用いたモザイク貼りの床、連続する柱と梁

廃棄建具でできた外壁とサッシ

「設計者としてのボーダーが見えにくいボーダレスなデザイン」

実際の施設を拝見すると建築に関わるところは非常に明快ですが、どこまでが設計者の仕事なのか、どこからが運営の工夫なのか?その曖昧性が絶妙であり、そこに設計者の意図があったのであれば、設計者として感服せざるをえません。

ホテルやショップも付帯しており、運営面から見ても非常によくできた施設で、ソフトとハードが一体となっていることが非常に良くわかります。

「?」の点の部分は学びのためのホテルになっている

左から)エントランスアプローチ、エントランス内部トップライト

「施設寿命としてのサステナブル」

オープン後、2年以上の月日は経っていますが、決して色褪せず、むしろ輝いて見えたほど持続可能な施設だと感じました。まさに経年劣化ではなく”経年良化”した好事例であると思います。

住民や見学者が介在することで施設の価値がさらに高まり、その活動が世界的に注目されることとなっています。設計者はモノのみならずコトをデザインすることがますます重要になっているのだと感じました。

左から)町民の方が不要になったものをお持ち帰りいただくことが出来る「くるくるショップ」、まだまだ使えるものがたくさん!

左から)廃ボトルのシャンデリア、掲示スペース

左から)ノスタルジックな演出、味のある陶器類

Chapter_03:デザイン・ツーリズム視察ツアーin 徳島を終えて

「上勝ゼロ・ウェイストセンター 」は、我々メンバーが現地を視察した時点では日本空間デザイン賞2022の金賞受賞作品でしたが、最終審査の結果、なんと最高賞である「KUKAN OF THE YEAR 2022」も受賞されました!おめでとうございます!

なるほど、この作品には最高賞を獲得するだけのインパクトと説得力があったように思います。まさに空間の持つデザインのチカラが、地域をそして世界を感動させているのだと再認識させれられました。

ツアー参加者一同

デザインでお腹いっぱいのメンバー

空間デザインの可能性は無限に広がっています。

日本空間デザイン賞はこれからも人々を感動させるようなデザインを社会に広げる活動を続けて参ります。次回以降のデザイン・ツーリズム視察ツアーもますますパワーアップし開催予定ですので、お楽しみに!

また、 「上勝ゼロ・ウェイストセンター 」が選出された三次・最終審査会の様子を下記よりご覧いただくことができます。審査員による非常に白熱した議論が展開されていますので、こちらもぜひご視聴ください。

日本空間デザイン賞2022 三次・最終審査ダイジェスト

日本空間デザイン賞実行委員会